読書日記と日々のあれこれ

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『宝島』を読んで知った占領時代の沖縄

直木賞受賞作の『宝島』(真藤順丈)は、聞いていたとおりのおもしろさだった。

1952年~1972年までのアメリカ占領期のただ中にあった沖縄のコザを舞台にしながら、暗くならない語り口が見事。

しかしながら、出てくるエピソードも登場人物たちも、沖縄の基地の町に暮らす人たちが占領後今日に至るまで抱えてきた苦しみ、痛みを想わせる。

これまで私が知らずにいた占領期の沖縄をこの小説をとおして垣間見た。

本土の人間は無関心だとよく聞くが、そんなつもりはなかった。だが、これを読めば、私が無関心だったことを認めざるを得ない。

 

幼なじみ3人を主役にこの物語は進む。

米軍基地に侵入し、備品を盗む「戦果アギヤー」として、基地への襲撃を繰り返していた彼らだが、ある日の襲撃でリーダーであり、彼らの英雄だっただったオンちゃんだけが戻らなかった。

オンちゃんの弟レイ、オンちゃんの恋人ヤマコ、そしてオンちゃんの親友グスクの3人は、その後それぞれ別の道を歩んでいく。立場は違えど、沖縄・コザを愛し、守ろうとする3人は20年という長い年月の末にあの日何があったのか突きとめる。

 

物語全体に沖縄という土地が抱えて来た問題、悲しみ、苦しみが込められている。

日本という国が、沖縄をどう扱って来たのか。日本にとって沖縄とは何か。

そして、沖縄にとって「日本」とは何か。

 

沖縄の音楽、舞踊、文化、言葉……そのすべてに異国的ともいえる不思議な印象を受ける。沖縄県知事選の際、玉城県知事が躍ったカチャーシーは、沖縄の人たちの明るくおおらかな雰囲気を表しているように見えた。

(実際のところ、沖縄に行ったことがない(本州からも殆ど出たことがない)私には、沖縄の人たちの人柄について、「イメージ」しか持ち合わせていないのだけれど。)

1972年に日本に復帰してからも、沖縄は変わらず多くの重荷を負ったまま。そして、基地を知らない多くの日本人は、無関心なままだ。

私が多少なりとも「無関心ではない」と思っていたのは、私が中学~大学時代を過ごした地域は米軍基地や自衛隊の基地が比較的近くにあったためだ。

読み終えて、思っていたより自分は無関心だった。遠い沖縄のことをそれほど真剣に知ろうともしていなかったと思うのだ。