読書日記と日々のあれこれ

読んだ本の記録と紹介です。たまに映画も。

保育園問題は日本だけじゃないらしい

 

 

私は、子どもがいないので経験がないが、妹や友人、元同僚たちも「保活」には苦労していた。

 

妹が保活した年、点数のカウント方法が変更になったそうだ。その結果、世帯収入が多い家庭が不利で、それなりに給料が高い家庭が軒並み落ちだ。その後、その自治体がどうしたのかはわからないけれど。その年について言えば、「給料がそこそこ高い職業」と「高齢出産家庭でそこそこの世帯収入」、つまり税金もそれなりに払っている人たちが、予定通り復帰できなかったらしい。ポイントはたいていの家庭が「そこそこ高い」ってとこで、別に皆、すごく高い訳じゃない。不認可のとこに入れたら、時短してたら給料はほぼ持ってかれる、これ稼ぐ意味ある?ってちょっと考えてしまうという程度の給料だ。多くの人は、先々のことを考えて無認可保育園を一時的に利用しながらでも復帰したようだ。一度諦めて退職したり、パートタイマーになったりしたら、さらに認可保育園に入るのは困難だから。

何だかもう、本末転倒というか何というか。

 

とはいえ、増やそうとすれば、単純に予算問題だけでなく、場所の問題やら設備、人材と課題山積みなんだろうな。

 

でもこれは、日本だけじゃないらしい。(だから良いというわけではない。)

ただ、「教育」分野って予算削減しやすいんだなと思ったのだ。

 

確かに、教育分野については、20年以上経たないと結果が出てこないし、削った瞬間目に目えてその影響が出るというものでもないのかもしれない。

いや、悪影響は出るんだけど、その煽りを思いきり受けるのは、大概弱者なので、あまり目立たないというか、たとえ不満があってもその声が届きにくく、無視しやすいのだろう。

正直言って、私は子どもがいないので、教育関係分野の予算が削られてもあまり実生活に影響してこないため、言われないと気付くことができない。こういう人、結構いると思う。

 

イギリスにおいては日本とは違った社会構造があるため、差別や貧困の構造はさらに複雑だという印象だ。それは、イギリス社会に身を置いてみなければ見えてこないものでもある。しかし、どこでも共通しているのは、その国、その社会において少数者、貧困者、こどもなどは行政の制度の変更や予算に大きく振り回されて生きているということ。そして国や自治体が経済的に苦しくなると、まっさきに切り捨てられてしまうらしいということだ。

 

イギリスの貧困地区にある慈善センターの託児所での勤務経験をもとに書かれたこの本は、通ってくるこどもたちとその家族をとおして、イギリスの政治と社会を語っている。政治の変化はこの貧困地区の様子に大きな影響を及ぼす。そしてその影響は、その中でももっとも力のない子どもたちに及ぶ。力のある者は、一番小さなものを切り捨てることに無頓着だ。きっと切り捨てているということに気付いてもいない。

 

保育園や小学校に通うこどもたちは、20年後その国を作り上げる大人になる。

目先のことはもちろん大事だ。今、飢える人がいてはならないから。けれども、20年先のことも、大事なのだ。20年後に大人になった彼らが、どんな考えを持ち、どんな世界を築きあげようとするかは、託児所の時代から始まっている。