読書日記と日々のあれこれ

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『あの夏のソウル』

 

あの夏のソウル (YA! STAND UP)

あの夏のソウル (YA! STAND UP)

 

 

『鉄原、1945』の続編となる『あの夏のソウル』は、日本の植民地支配から解放され、新たな国家建設に取り組む若者たちの姿を描いた前作のその後、朝鮮戦争の時代のソウルを描いている。

 

子どもたち、若者たちは「今目の前にある国、暮らし」の先に、作り上げるべき世界を夢見て、その理想に向かっていく。

けれども、彼らが望むものは何なのか。それは、安心して家族と暮らし、腹一杯食べ、学ぶことのできる「普通の生活が守られる世の中」だ。どちらのイデオロギーを選ぶにしても、彼らの願いの根底にあるもの、彼らの守りたいものは同じだ。

それを戦争という形で実現しようとする為政者たちは、人々の望みを利用して、自分たちの理想を実現させようとしているだけで、これはあらゆる国のあらゆる戦争に同じことがいえる。

 

戦争は、幸せな暮らしを実現する手段には絶対になり得ないのに、「理想を実現するために」「平和のために」と戦争へ向かおうとする為政者の思惑に私たちは気づかなくてはのらない。戦争は、確実に多くのものを奪うのだから。普通の暮らしも、夢も希望も、人と人との信頼関係も。そして一度崩れた信頼関係は、なかなか回復しない。そのことは歴史が証明している。

 

『あの夏のソウル』に出てくる若者たちも、前作の『鉄原、1945』に出てくる若者たちも、ただただよい国を作り上げることを夢見て、懸命に生きていて、若い彼らが払う犠牲の大きさに心が痛む。

 

1945,鉄原(チョロン) (YA! STAND UP)

1945,鉄原(チョロン) (YA! STAND UP)