読書日記と日々のあれこれ

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何ということのない普通のことと幸せ 『平場の月』

『平場の月』朝倉かすみ (光文社)

地元の友人同士のやり取りや、偶然の再会、そこから始まる関係など、とてもリアルな「地元」の空気が物語全体に漂っている。50代になって再会した中学の同級生との恋愛を描いた小説だった。

どうということのない、いかにもありそうな(実際にあるかどうかはわからないけれど)、華やかさもない現実的な。とても現実的な。

そんな言葉が思い浮かんだ。

けれども、そんな場所やそんな関係の中に、案外穏やかな幸せや満足感があるものかもしれない。

時々地元の友人たちと会って話した時、意外な二人がくっついていたり、病気になっていたり、離婚したり……と耳に入ってくる数々の噂話を思い出す。平場。

この小説に出てくるエピソードはどれも「平場」だ。

いいことも悪いことも。

でも、平場というのは、悪くないと思った。

 

50代にはまだ遠い。10代や20代の人たちから見たら、早々変わらないと見えるかもしれないけれど、今の私にはやはりまだイメージがしにくいくらいには先だ。

50代になった時、私はどんなふうになっているだろうか。50代になってから、恋愛をすることがあるだろうか。夫とはどんな関係だろうか。

けれども、きっと今とそんなに変わらないだろう。これから「平場」な悲しみや苦しみ、それに幸せを経験しながら、50代になる。その経験の分、私は良くなっているか悪くなっているかわからないけれど、でも案外、今と同じように「50歳って、こんなもの?もっと大人になっているかと思った」と呟いているような気がする。

そうであればいいと思っている。