『結婚』
原題は『立っている女』という。
韓国の作家パク・ワンソの小説だ。
旧来の結婚観、女性観と、新しい時代の新しい結婚観、女性観の間で戦う若い女性が主人公である。
女性とは社会において家庭においてどのような存在なのか。
この小説が書かれた時期は韓国においても社会が大きく変わりつつある時代だったのだろう。
とはいえ、実感としては日本もそう変わりはしないのではないか。
多少変化はあるにしても、案外今も変わらない「男尊女卑」の思想は、生活のそこここに窺える。
親たちは相変わらずこの小説に出てくるような言葉を口にする。
80代以上の人に比べて60代の人は、「こんな風に考えるのは古いかも」「今時こんなことをいうのはどうか」との躊躇いを持っているように感じられるが、内心では同じように考えている人が多いのが、話をしていればわかる。
すでに成人している世代の大部分も、多かれ少なかれ「男女の違い」「男女の差」「あるべき男・女の姿」にかなり捉われている。そのことを意識すらしないほどに当たり前に。
小説や映画やドラマなどをとおして、明確にそれを突きつけられるとき、はっと気付かされることの何と多いことか。
私がした選択は「ひとりの人として」したものなのか、それとも「女性として」そうあるべきだからしたものなのか。
女だからと諦めた結果ではないのか。
女だからと自分を納得させてはいないか。妥協してはいないか。甘やかしてはいないか。
これを男に入れ替えても同じ問いが成立する.
男だから、女だからと生き方を制限されるべきでも強制されるべきでもない。
人間として当たり前の権利を当たり前に持つことができる、行使することができることが目指すべき世の中なのだから。
しかし、難しいことを考えずとも、この小説は読みごたえがあって面白い。
大変に腹が立ち、悲しく、空しい思いにもなるけれど、ラストがすがすがしく、生きるということを教えてくれる物語だ。