読書日記と日々のあれこれ

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『惨憺たる光』

 

惨憺たる光 (韓国女性文学シリーズ6)

惨憺たる光 (韓国女性文学シリーズ6)

  • 作者: ペク・スリン,カン・バンファ
  • 出版社/メーカー: 書肆侃侃房
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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人が抱える苦しみや悲しみ、光と闇、生と死、さまざまな面から人を描いた短編集だった。全部で10編の小説はそれぞれが人の生の重みに満ちていた。

人とはこれほどに苦労しながら「それでも」生きていかなくてはならないという現実を思わされる。

 

思いがけない出会いと別れ、複雑な人間関係、思い通りにいかない人生、私たちの努力では如何ともしようがない世界の変化。戦争や環境破壊や事故や病。

隣にいる親しい人のことでさえ助けることもできない現実。

人間の生はあまりにも生きるのに困難に満ちている。

けれども、これらの物語から感じるのは「それでも生きる」ということで、それが人生だということだった。

 

年老いた義理の両親のことをふと思い出させる『北西の港』を読んで、両親の若い頃のことを考えたりした。そしてこれからのことを。

彼らもまた、今日まで多くのものを背負いここまで生きてきたのだろう。けれども、私の目には彼らは「老人」でしかなく、彼らが若い頃に経験してきたこと、彼らが若かったことをリアルにイメージすることができない。

義両親は共に暮らすにはかなり大変な人たちで、一緒に暮らそうと言えない主人公の心情はよく理解できる。

 

私たちも、それぞれに人には言えない思いや経験を抱えて、一日一日生きて積み重ねて今日まで生きてきた。それは人から見れば、些細なことであるかもしれず、誰からも理解されない悲しみであるかもしれないが、それぞれにとっての重みは誰にも否定できない。

ただ、それでも生きていく、そういう力を持てますように。